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落照の獄

こんばんは。

これといって書くこと無いんですが、週に一度くらいブログ更新をしたほうがいいと、天からの夢の啓示を受けたのでキーボードに向かいます。
まあ基本的に小説を読むことと、テレビを観ながら酒を飲むこと以外の事はしておりませんが。
原稿?一切やってません。早割り締め切りはもうあきらめました。

というわけで「十二国記」を完読いたしました。
いい本との出会いは、生涯の友人との出会いのようなもの。
色々と考えることが多かったです。

短編集の中に「落照の獄」という作品があります。
日本風に言うと一人の裁判官の話です。

連続殺人犯が捕まりました。
ほんの小銭のために、行きずりの子どもを殺したり。
泊まる所が無いので一家を惨殺して、死体を放置したまま宿にするような男です。
23人の犠牲者が出ました。

民は、世論は、死刑を望みます。

しかしその国では死刑は原則的に廃されていました。
あくまでも法や刑罰は犯罪者の更生のために作られたものであるとして。

ところがその国は少々傾いていました。
王が国政を蔑ろにし、官吏は汚職に走りと、色々とたがが緩んでいたのです。

判事は王に判断を仰ぎますが、やる気を失った王はすべて任せると投げ出します。かくして裁判を担当する者たちは顔をつき合わせて意見を交わします。死刑に相当しないという理由が無いかどうか。

年齢、判断能力とも問題ない。
過失でもなくすべて犯罪と知っていての自己意思による殺人。
民は世論は、当然のごとく死刑にせよとの声。

しかし裁判官は躊躇します。
死刑の「前例」を作ってはならないと。
この傾いた国で、死刑を行ってしまえば、今後もみだりに振りかざされなくもないと考えたのです。また、冤罪で死刑になる者が出る可能性も指摘します。

それに対して別の裁判官が反論をします。
みだりに振りかざさないために我々司法者がいるのではないか。
冤罪の可能性を言うのなら、冤罪で終身刑になる者もいてはならないではないか。

そうして議論をするうちに気づきます。

死刑を望むものは、感情論で訴えている。
死刑に対して慎重なものは、理論だけで訴えていると。

子どもを殺された、憎い、殺してやりたい、そんな非道なヤツが生きているのが許せない、そういった遺族感情を和らげるためにこそ死刑があるのです。

結局は「反射」だ、と。

殺されたから、殺したいと反射的に訴えるのが遺族や民たち。
人を殺したくないと、反射的に理論武装するのが裁判官など高官たち。
彼らは「人殺し」になりたくなかったのです。

どっちもどっちならもはや犯人に聞くしかないだろう。
果たして更生の可能性が一ミリでもあるのかどうか。
今まで大して取り調べにも生返事で応じなかった殺人鬼に裁判官たちが問い尋ねます。罪を償おうという気は無いのかと。

しかし彼は「詫びたところで死んだ人間が生き返るわけでもない、償うことなど出来ないのだから考えても無駄だ」と言います。

ある子どもの殺人についても「酒を飲むのにちょうどいい小銭を持っていたからなんとなく」と言いのけます。日本風に言うと、彼は懐に何万円も持っていましたが、買い物に出かける少年が300円を握り締めているのに気づき「缶ビールを買うのにちょうどいいな」と物陰に連れ込んで扼殺したのです。

裁判官たちは愕然とするのです。
更生のさせようも無い、理解しがたい存在に。
しかも昂然と自分はクズだから死んだ方があんたらのためになるだろう。
だから懲役や禁固なんかせずにさっさと殺してくれ、と語ります。
まるで自分を弱者のように装い、被害者面すらするのです。

それでも逡巡する裁判官らに、男は言います。

「俺は絶対に悔い改めない、絶対にそれは無い」

やむなく死刑が言い渡されます。
それに対して腹を抱えて笑う殺人鬼。
ひどく敗北した気分で裁判官らは牢を去るのです。


いわゆる「無敵の人」ですね。
国家に法律は必要ですが、取り締まることができない人間は一定数存在するものです。そのような人の数を最低限にできるような治世というものはあるのでしょうか。現代日本はかなりのレベルで達成していると思うのですが…。

ではまた。
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りかや

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■著作紹介

40歳無職独身ロリコン紳士が死亡転生し、女の子として生まれ変わった。失われた性欲を求めてさまようとっても下品な美少女JS物語。COMIC ZIN様で好評販売中!


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